弊社は相当以前から自治体様には高圧自由化分野の電力入札をお勧めし、仕様書へのアドバイスを通じて無償コンサルティングを行い、入札化された案件から弊社扱いの新電力を参加させて札入れし、落札したものは収益化してきました。

一時期からは入札が盛んになり参加者が増え、落札額も相当に低くなって落札が出来なくなりました。

落札出来なくなったのは無駄な営業でしたね?ではなく、自治体の電力入札結果を営業に利用し、民間会社はもっと頑張って見積もり合わせすべきですよとトークできたので、無駄ではなかったです。

ここで電力入札が一般化し、していない自治体が少数派になってきたときに、

2022年度2月にウクライナ紛争が勃発し原油高が直撃しました。

日本中ほとんどの小売り電気事業者が赤字に転落し、中には落札した新電力が契約期中に値上げに踏み切ったり、中途で撤退・破綻する羽目になった自治体が有りました。

撤退された自治体は、契約を地元旧一般電気事業者に戻そうとしたりしましたが、受付停止中で割高な最終保証契約を結ばざるを得なかった場合もありました。

現在はどうでしょう?

細々と入札は続いているようですが、小規模な見積もり合わせ以外はほとんどの自治体が電力入札を停止し、地元旧一般電気事業者との随意契約を継続するしかない状況が続いていると思います。

そのため、ご存じのように旧一般電気事業者の値上げが2023年度に実施されましたから、電力経費は1.5倍ほどに膨れていると思います。

しかしながら、電力業界は復活しつつあります。

原油は1バレル70$代で、値上げ前の50$代まで戻っていませんが、LNGは紛争時の半分レベル12.76$/100万BTUまで戻ってきています。

新電力も、市場連動を売るのが主流になっていますが、通常の固定価格値引も再開してきました。

新電力の調達している電力卸売市場が13円/kwhと順調に安く、皆さんが購入している地元旧一般電気事業者定価の30~35円/kwhより値下げしても全然安く利益が取れるようになっています。

中には、地元旧一般電気事業者比較で10%も値引いた見積もりも出てきています。

これは、値上げされた料金に甘んじることなく、自治体様の規定通り随意契約を打破して入札を再開するチャンスです!

ここで、以前のように同じような仕様書で入札が失敗しないように、仕様書の工夫をしましょう。

1.燃料調整費は地元旧一般電気事業者と連動とする

これは、以前にこのブログで報告した通りに、独自燃調を始めた新電力が多いため、比較しやすいように、料金レベルを統一するためです。ですから、次の項目が生きてきます。

2.料金項目は 基本料金、従量料金、燃料調整費(地元連動)、再エネ賦課金しか認めない

これであれば、地元旧一般電気事業者と比較しやすく、なおかつ「電源調達費」?などの意味不明な項目で実質値上げする小売り電気事業者落札を防ぐことが出来ます。

業界では容量市場拠出金が国の制度で発生し、一部の小売り電気事業者はそれをお客様に請求していますが、それらは基本料金や従量料金に込めることを要求すれば良いのです。

容量拠出金は年度ごとに負担金額が違いますし、自治体の4月以降単年度入札ならば適用は同じ期間ですから問題になりません。

請求(見積もり)項目を統一出来ない場合は、再エネ賦課金を含めた総請求額比較にすれば無用な変動・値上げを防げます。

3.世界情勢変化・原油高時の契約内容変更を拒絶し契約期間中の単価変更は認めない

4.契約破棄・撤退時の契約期間中の損害補填を要求する(最終保証契約・地元旧一般電気事業者定価レベルなどになった場合はその差額を補填することを明記)

これらは2022年の反省を踏まえ、同じ失敗をしないためのものです。

4に関しては契約者が破綻すれば意味がないですが、裁判で係争にもなりました。

この項目を見て参加者が減ったり、入札が成立しない場合も有るとは思いますが、「入札しない=高い随意契約に甘んじる」よりはましです。

送電線使用料や国の制度変更、複数年契約による容量拠出金の値上などによる負担増大の場合は、条件が異なりますから協議に応じることにしましょう。

5.多くの拠点はグループ分けする、1~3月入札の4月切り替えを避ける、複数年契約の工夫

これらは参加者を増やす工夫で、いまさら解説することも無いと思います。

複数年契約の工夫というのは、入札時に2~3年の複数年契約を条件にすると、リスクを恐れて参加者が減る場合が有ります。しかしながら、毎年入札するのは面倒ですよね?

そこで、「契約内容が安価・良好な場合は次期に入札せず契約を更新協議する場合がある」という文章を入れるのです。

そうすれば契約期中値上げをしていない落札者の場合は、次年度もこの単価のまま更新しようと話し合いが出来ます。休みたくない方は毎年入札でも結構ですが?

新電力の破綻を恐れる方は、決算書の提出を依頼したり、売上トップ10を調べて上位者を指名競争入札にするのも良いでしょう。


ここまで読んでいただいても、「本当に入札しても大丈夫なのか?」という役所担当者の方がいるかもしれません。2022年度のことから、新電力への不信感は払しょくされたとは思っていません。

しかしながら、東北管内には80万kwの原発が再稼働した旧一般電気事業者さんが居るではないですか?

原発の原価は11.5円/kwhという国の試算ですから、これは地域の電気代を大幅に下げるでしょう。

高圧大口の値引きが優先し、低圧小口の規制料金値下げは先延ばしになるかもしれませんが・・・?

当然ながら、入札する時は現契約者で守る方になると思いますが、入札時はちゃんと指名や案内をしてあげましょう。

自治体様のような、大口・優良顧客には、大きな値引きで札入れをするかもしれません。

原発再稼働は値上計画の中に入っていて値下げの原資にはならないのでは?と思う方はまともな指摘ですが、電力会社というのはお客様を無くすと売り上げが無くなるので、安く売るよりつらいのです。

これは、多数の民間引き合いを見てきた弊社の確実な情報です。

また役所担当者の方には、仕様書を厳しくして入札が不調になっても責任を感じることは有りません。

前回の反省を反映した仕様書で入札したのに、参加者が来なかったから不調になったので、電力随意契約を良しとしていたわけではありません、と議員さんや市民の皆様に説明できるではないですか?

ところで、自分の自治体では電力入札をまだしていません、という方は・・・・

地元旧一般電気事業者と癒着しているのか?・・・と議員さんに疑われないように、電力入札の研究・研修を開始しましょう。今は、そんな時代ではないですよ。

地方と電力入札はなじみが無いという考えは大きな間違いで、国の出先機関や外郭団体は変わらず毎年入札をしています。そのエリアで応札者が居るかどうかは関係なく、入札しないと予算が執行できないのです。

県などは警察学校だけ入札しています。なぜかというと、警察学校だけ国の警察庁の予算が入っているからです。

「国の予算だからそこだけ入札します」なんて、市民・県民・議員が納得するわけないではないですか!?

また何でこのような情報を弊社が展開するかと言えば、入札が盛んになれば新電力や自由化がまた復活できるのではだけでなく、失敗してもやり直せるということを証明したいのかもしれません。

どんな自由化でも紆余曲折有りますが、後戻りは出来ませんよね?

よろしくご検討を、お願いいたします。