電力自由化の進展で、お客様が新電力に切り替えたり、新電力を乗り換えたりするのを長年お手伝いしてきました。
その中で、旧一般電気事業者に戻る方(戻り需要)もありましたので、資料の提出をお手伝いしました。
国は、戻り需要には不当な高値設定をしてはいけないと指導していますから、元の割引メニューに戻るのは(そのメニューが残る限り)容易です。
しかし申込時に「お客様の技術資料が無いので、提出ください。前の資料は保管義務が無いので破棄しました」(!)
と言われて驚いたことがあります。
以前、旧一般電気事業者の保全の方にお会いした時は、
「離脱するお客様は旧お客様ナンバーで管理していて、離脱後も安全のため使用の様子を監視していますのでご安心ください」と聞いていたのでおかしいと思いましたが。
結局、お客様が資料を一部亡失していたので、再作成して提出し、事なきを得ましたが、なんだか納得できません。
ところで、技術資料とは何でしょうか?
旧一般電気事業者のサイトを見ると、高圧の新規申込者には以下の資料の提出が求められていました。
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■お申込みの内容によって、必要に応じて、任意様式などにより、以下の書類を提出いただきます。
- 単線結線図
- 使用区域平面図
- 装柱図
- 保安規程届出書(写)
- 主任技術者選任届出書(写)
- 高調波流出電流計算書
- 電灯・動力配線平面図
- (負荷設備一覧)
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下の図が単線結線図の例で、確かにどのように受電しているかを的確に表しているので必要性は理解します。
しかしながら、お客様などシロウトの方からしたらちんぷんかんぷんで、専門家でないと作成できないのが大半です。
しかも電気主任技術者にかかわる資料以外は、建設後の建屋の完成図書の保管が悪い場合が多く、ほとんど亡失してる拠点が多いはずです。これは、低圧受電や一般民家ならばなおのことです。
保管義務が無いので、破棄するのも勝手ですが、本当に無いのでしょうか?
彼らは送電線を維持管理する義務がありますが、例え新電力の需要家とはいえ、受電資料を破棄して安定供給を維持できるのでしょうか?
しばらく様子を見ていると、最初の図のように、新電力の全量供給型から部分供給型へベース供給を依頼する変更時時にも同じことを言っているのがわかりました。
いきなり部分供給になるときは、(国の指導もあり)問題なく請けるのに、金の切れ目が縁の切れ目なんですかね?
嫌がらせとしか思えませんでした。
お客様もそれを聞いたら切り替えに躊躇しますよね?
しかしながら、電力自由化を利用している需要家の資料が小売り営業部門の都合で破棄され、2020年の発送電分離時には、新電力のお客様の資料がすべて送配電会社に渡らない可能性があります。これは、恐ろしいことです。
そう考えると、電気の技術資料はやはり旧一般電気事業者の送配電部門が今からでもさかのぼって保全・保管・管理すべきです。
そういった下らない対応が続きましたところが、アクシデントが起きます。
2016年春に、業界5位にまで登りつめた新電力が破綻しました。
国は需要家保護で、旧一般電気事業者と他の新電力に速やかに受け入れるように要請しました。
後で聞きましたが、その時は旧一般電気事業者は「電気使用申込書」たった1枚で(資料が無くても)次々に迎え入れたということです。
小売り営業部門の都合を吹っ飛ばしてくれてありがとう!と言いたかったです。
しかも最近の自由化の進展で、旧一般電気事業者の離脱したお客様(新電力のお客様)への再値引き提案の勧誘営業が始まったというではないですか?